タイの温泉「ボーナムローン」(要旨)
温泉誌(日本温泉協会):2001年5月号
1、タイの温泉事情研究事始め
タイに温泉がある事を知ったのはまだそんな古いことではない。限られた地域を行ったり来たりしているので見過ごしたり、日本と全く違うので“温泉”ではなく観光の「温泉地」か「温泉噴出地」ぐらいにしか思っていなかった。しかしこの執筆の5年ほど前(1996年)に初めて温泉に浸かったことから「何故タイに温泉があるのか」との疑問が頭に残っていた。
1996年12月、1週間プラツドン<遊行僧>(野宿しながら徒歩で修行する僧侶の事。この時は全て寺に寄宿。チェンライのピアラム寺院の僧正、モントリー僧と一緒<2003年1月29日、ガンのため37歳の若さで永眠>。)との修行で一緒にチェンライからチェンマイまで約200kmを歩いて行く4日目に温泉地を管轄しているスリィラットナムンタン寺院についた。
その時の日記には、「タイに温泉があることは聞いていたが、ここの温泉はバーンナムローン(温泉の村)で国道118号線を通る人たちの休憩・観光・保養地である。温泉の温度は90度あり、噴き出し口が見られる。入浴料は、30バーツ(135円)と少し高いが洋式バススタイルで汗が流せた。」と書いた。
21世紀の初めをタイのチェンマイで迎える幸運を得たので、この地を再訪し、もっと詳しく調べた。と同時に新しい発見は、タイにはここだけでなく4県(南部のラノーン県、北部のチェンマイ県、チェンライ県、メーホーンソーン県)の10個所にあることが、地元で聞いた情報やタイ語・英語のガイドブックや全国観光地図からわかった。
*(その後中部のカンチャブリー県に旧日本軍の発見した温泉と北部のターク県にも温泉の取材に行ったので6県、そしてチェンマイ県に2つ、チェンライ県でも新しい温泉地を4つ確認したので合計18個所確認)。
温泉好きの日本人は多い。まだこれらのタイの温泉に行ったことがある人は少ない。「地球の歩き方―タイ編とタイ北部編(1990年版)」には合せて5個所が辛うじて紹介されていたが、2000―2001年版には紹介個所が3個所に減っていた。
タイ語でカンマタン(硫黄)と言われる物質が湧き出している。花崗岩が熱を持ち地下水を温め,ガイサー(間欠泉)になって湧き出している。ナムプーロン(間欠泉式)とボーナムローン(源泉式)に区分が出来る。又、プーコロン(泥泉)と言うそのままの地名の温泉地がメーホーンソーン市のワナウッタヤーナムトーパースア公園近くにある。
タイには温泉があるので、地殻の変動による地震もある。又、タイの人々は、人前で全裸になる習慣がないので公衆浴場はない。しかし各温泉地では入浴ができる個室の施設がある。温泉地を訪れる人たちは、温泉の熱湯に鶏か鶉の卵を入れてゆで卵にして食べるのが一般的である。
まだ紹介されていない温泉地が沢山あるようだ。現在分かったのは次の10個所(追加確認の8個所は含まず)
。
・ラノーン県(ボーナムローン)@
・メーホーンソーン県(プーナムローン
ブークロン、パイ)A
・チェンマイ県(サンカンペーン、ルンルアン、ファン、チャイプラカーン、メーテン)D
・チェンライ県(ウエンパパオ、メーチャン)A
*(
カンチャナブリー県のヒンダ。ターク県「メーソット市郊外」のメサラナ。チェンマイ県のマリガ(バーンムアンガーン)、メーハーン。チェンライ県のポーンプラバーツ、ホアマークルーアム(リンコック)、ホアイサーイカウ、ポーンプウプーアン及び―8個所を追加確認)…・合計18個所を確認。
*北部のウタイターニー県に1個所、ターク県にもう1個所、そしてチェンライ県にもあと1箇所あるようだ。(タイの観光地図に「HOT
SPRING或いはSPA」の文字が見える。しかし未確認だが、間違いないだろう。合計21個所。)
2、取材した温泉地や著書から拾った温泉地の主な特徴を紹介します。
・ラノーン…南部のミャンマーの国境近く。ジャクソン タラ ホテルに温泉を引いている。温度は42度位。
・プーナムローン
ブークロン…泥の温泉である。温度は高い。
・パイ…森の中に湧き出た温泉。露天風呂がある。山岳民族の住む地域。
・サンカンペーン…温泉施設は清潔に完備されている。温泉入浴施設には4種類の楽しみ方がある。又、タイ式マッサージもある。宿泊もできる。間欠泉は複数ある。温度は105度。公園内の花は何時も奇麗。裏手には「ルンルアン」がありサンカンペーンの半分程度の規模。
・ファン…山岳民族の住む地域。温度は100度。小さな間欠泉が数本と温泉池が数箇所あり、一定の時間毎に1本の間欠泉が40m以上噴き出すのは見事である。サウナ3室、露天風呂が4つある。地熱発電施設がある。国王が来られた施設が残っている。
・チャイプラカーン…中国からの国民党の住む村にある。
・メーテン…広い公園の奥(徒歩約5分)にあり、周囲は自然が豊富でハイキングに最適。温泉施設は完備している。露天風呂は川をせき止めており、入浴は自由。
・マリガ(バーンムアンガーン)、メーハーン…チェンライのメーチャン(メーチャン温泉も同じ道にある)からチェンマイに行く1089号線沿いにある小さな温泉池。入浴施設はない。
・ウエンパパオ
ボーンナムローン…国道118号線沿いにあるので多くの人がゆで卵(温泉卵)を楽しんでいる。川にも温泉が出ている。入浴風呂は1個所ある。
・メーチャン…温泉小屋(8部屋)がある。池には温泉の温水の影響による貝(ホーイコン)が繁殖、美味しい。レジャー公園。
・ポーンプラバーツ…バーンヅウ町の奥、数キロ入った村にある。清潔な部屋が6室ある。町の公共施設の敷地内にある。
・ホアマークルーアム(リンコック)…リンコック公園内と周辺数箇所に温泉プールや温泉池がある。入浴・レジャー施設は、P.K
RESORT&SPAが完備中。象乗りと川(メーコック)のボートツアーそして温泉池見学の組み合わせがある。リンコック公園の温水の温度は67度。
・ホアイサーイカウ…チェンライ市内から約40キロ先の国道1号線沿いにある温泉、子供用に6つの水浴び場がある。温度はあまり高くなく3種類(hot,worm,cool)の温泉がある。
・ポーンプウプーアン…。118号線から1・8キロ入った小高い丘の麓にある。温度は100度ある。無人で畑の中に出現。
・メサラナ…山の麓にあり公園になっている。広い個室の温泉部屋がある。洞窟への見学コースも目玉。
・ヒンダ…第2次世界大戦の際、日本軍が発見した温泉。今は宿泊施設も完備。近くには高名な日本人僧侶の瞑想寺院がある。
3、タイの温泉のこれから
日本の温泉地とタイの温泉地が似ているのは、山や川が近くにあり、交通が不便なところにあるくらいだ。これらの温泉地には何故か西洋人をよく見かけた。
タイの温泉の効用は、今はまだよく分からないが、間欠泉から流れる温かい川に足を付けてリラックスしているご婦人たちを多く見かけた。これからよい効用が分かればもっともっと利用者が増えよう。
チェンライのある温泉地には「健康のため温泉を利用しよう。30分以上浸かるは限界です。」と壁に書いてあった。段々利用者の増加と施設の整備が充実しつつあるのが温泉フアンとして嬉しい。
(追記;2003年12月にチェンマイ、チェンライ周辺を追加調査が出来たのは、チャタサモー僧のお陰であり新規5個所の確認ができた。)