ボーイスカウト隊の親善交流旅行(全文)

TAT(タイ国政府観光庁)「ムアンタイ」:2001年5月号

(補章:タイ国におけるスカウト運動の学校教育への積極的な導入

・・・交通論叢:2002年5月

 

2000年の暮れ、学校の冬休みを利用してタイのチェンマイ市の私立テポデント学校と日本のボーイスカウト浦和地区第19団のヴェンチャー隊(15―19歳)6名(学生5名、隊長1名)と団委員長(筆者)の7名が双方にとって初めての親善交流を図ってきた。ボーイスカウト運動は、世界150ヶ国以上で2,900万人以上が参加、青少年の育成活動に取り入れている。特にタイ国では義務教育にスカウト教育がある。少年少女の組織があり活動は同じように行なっている。全国の小学・中学生の約500万人の生徒が、ルークスアー(男)、ネーナリー(女)と呼ばれ、普段は学校で、年に1回は合宿をしてのスカウト教育を行なっている。

学校とキャンプ場での交流を予定していたのだが、学校での交流は日程が合わずキャンプ場での合宿3日間の内2日間となった。そこで経験した事は、驚きと感動の連続であった。日本側は、17歳の高校2年生が中心だったが、まず、タイのスカウト達(小学6年生220名)の親切で思いやりのある言葉、行動から皆「学ぶ事が多かった」との感想であった。ハイキングの時、滑りそうなところではタイスカウトたちが手を差し出したり、刺のある草木は事前に教えてくれたり、順番はきちんと守って穏やかに行動していた。タイのスカウトの誓いは、「スカウトの信義は誠実である」「スカウトの義務は人々の役に立ち助ける事である。」などが10条ありきちんと守られていた。

合宿は小4から始められ毎年レベルアップ、今年は3年目の12歳の全員がこの実践活動を通じ、学校内や家庭では学べないことを指導者の先生から学んでいく。日本のヴェンチャースカウトの5名は、220名が6班の組みに分かれた中に一人ずつ入って行動したり、セレモニーに一緒に参加したりした。指導の先生達の話術や説明は大変うまく楽しみながら自然に覚えていく工夫には脱帽であった。

キャンプファイアーではタイのスカウトたちは歌と踊りが中心だ。日本から来たスカウトの出し物に期待が持たれた。ゲームを2つ用意した。即席タイ語で「パーリンシュ」(ジャンケンポン)列車ゲームとロープくぐりゲームを用意した。リクエストにはギターを借りビートルズの曲を3人で1曲演奏、それに合せて「スカウトキャンプ腹だし踊り」を残り4人が即興で実施した。少しこの出し物には躊躇もあったが、学校の理事長から全員に賞品が渡され感激、感激、感激。

タイ国とのスカウト交流は、トップ同士はこれまで何回かあったが、スカウト同士は初めてである(タイスカウト連盟談)。そのうえチェンマイは、北部なので気候がよく、食べ物も美味しく、そして人々が親切と3拍子揃っていたので、朝早くから夜遅くまで楽しく有意義な交流が出来た。この企画にはタークライ寺院の僧正プラニコンの理解と協力があってのことである。サーラー(信者の集会所)で合宿させてくれたうえ、村の家にもホームスティの手配までしてくれた。すべて僧正のお陰である。コーコップンマークプラニコン

<追記>

2002年12月、第20回世界ジャンボリー大会がタイのサターヒップで開催。日本からも約1600人が参加した。(BS日本連盟にどの位国際交流とタイの理解ができたか問い合わせた。だが、返事がなかった。)

 

<補章―タイ国におけるスカウト運動の学校教育への積極的な導入…・交通論叢:2002年5月>

世界のスカウト運動の半数以上はアジア太平洋の国々(2,900万人の内67%)である。一番はインドネシアの989万人で次いでアメリカの604万人そしてタイの477万人、フイリッピンの340万人である。アメリカ以外学校教育にスカウト運動を正規の教育に導入している事例が多い。特にタイでは、国家、国王、仏教を国是としている。その国家を担う青少年の人材養成が目的で義務教育に1989年から正式に導入している。ただスカウト運動歴は、90年に渡る。日本と異なり地域活動ではない。「ちかいとおきて」は全く同じではないが、ベーデン・パウエルの提唱通りであり、ニュアンスの違いは、国王と仏教との絡みに気を配っているからであろう。毎週水曜日(主に)には全国の小学生の高学年と中学生は全員スカウトのユニフォームで登校する。文部省の管轄組織は、男女とも同じだが、呼称は異なっている。義務づけられていないが、18歳以上の短大や大学生になると制服は同じである。そして野外で行なう救急法、組み紐、隊列訓練を校庭でする。そして年1回の合宿がある。合宿は、我が国での修学旅行、運動会、学芸会をすべて兼ねた中に、国家や国王との繋がりを認識させる狙いがある。軍事的なプログラムは小・中学生にはないが、長い棒を各自持つのは鉄砲の模倣である。高校生のスカウト運動にはもっと軍事的な実技が伴うようだ。20歳以上の兵役は抽選方式なので意義は高いとも言える。

タイでは決してベーデン・パウエルがスカウト運動を提唱してからすぐに文部教育に導入したのではなく、ラマ4世の近代化政策とタイ国政府との思惑が一致してからである。

(本レポートは、「我が国のBS運動の衰退―青少年育成の課題と展望」の第4章から紹介しました。)

 

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